2026年度 第1回JAED研究会(研究編)実施報告
日本高等教育開発協会では2026年度中に3回の研究会(研究編/実践編/リトリート編)を計画しています。そして、2026年5月15日(金)15時~17時に第1回研究会(研究編)をオンラインにて開催いたしました。当日は19名の参加者(正会員13名、準会員4名、学生会員1名、非会員1名)でした。第1部「報告セッション」、第2部「対話セッション」という2部構成で進行しました。報告内容は以下の通りであり、会員限定ページにてアーカイブしています。
・報告1:「『高等教育開発』第1~5号投稿論文の傾向」(吉田博)
対話セッションでは、「高等教育開発研究とはいかなるものか」と「これからの高等教育開発研究を考える」の2つのテーマについて、ブレイクアウトルームで議論し、全体で共有しました。以下は、各テーマに関するルーム別の議事録を生成AIを用いて要約し、筆者が内容を確認、修正したものです。
【テーマ1】高等教育開発研究とはいかなるものか
高等教育開発研究とは、高等教育をよりよくするための実践を、単なる経験談や一過性のイベントで終わらせず、言語化・検証・共有可能な知見として整理し、現場に還元する研究であると整理できます。中心にあるのは、現場への貢献です。高等教育論や高等教育研究が大学教育を対象に理論的・分析的に扱うのに対して、高等教育開発研究では、「開発」という語が示すように、新しい方法・仕組み・ツール・プログラムを考え出し、実用化し、教育改善につなげることが重視されます。そのため、高等教育開発研究は、研究者が外部から現場を観察するだけの研究ではなく、研究者自身が教育実践のフィールドに責任をもって関わり、その実践を改善しながら知見を生み出す研究として特徴づけられます。授業、プログラム、カリキュラム、FD、学習支援など、身近な実践を出発点にしながら、「学生が成長した」という事実の背後にある要因を明らかにし、それを他の現場でも参考にできる形にしていく営みだといえます。
一方で、実践を研究にする際にはジレンマもあります。実践の新奇性や珍しさを追いすぎると、一過性のイベント報告にとどまり、研究としての蓄積になりにくいものです。他方で、研究の作法を強く求めすぎると、実践者が発信しにくくなります。したがって、高等教育開発研究では、厳密な論文だけでなく、報告、口頭発表、ラウンドテーブルなど多様な発信形式を活用しながら、実践知を段階的に研究知へ高めていくことが重要ではないでしょうか。
結論として、高等教育開発研究は、実践を出発点とし、そこから得られた知見を研究として整理し、再び教育現場の改善に返していく循環的な営みです。単なる調査研究でも、単なる実践報告でもなく、「高等教育をよりよくする」という目的に向けて、実践・研究・開発を接続するところに固有性があるとまとめられます。
【テーマ2】これからの高等教育開発研究を考える
これからの高等教育開発研究は、査読付き論文だけを到達点とするのではなく、実践・研究・開発・発信・組織変革をつなぐ、より広い営みとして展開していく必要があると整理できます。
第一に、今後の重要課題として、生成AIを高等教育開発研究にどのように取り入れるかが挙げられています。生成AIは、論文執筆の補助にとどまらず、ワークショップ設計、シラバス作成支援、授業改善支援など、教育開発そのものを支えるツールになり得ます。その意味で、生成AIを「研究対象」とするだけでなく、開発を進めるための方法・環境・支援装置として活用する視点が求められます。
第二に、教育開発を進めるための組織の在り方についての研究も求められます。教育開発を進めるためには、教員そしきおよび職員組織が機能する必要があります。一方で、これまでの教育開発は研修や同僚性に基づく開発に関する研究が中心で、教育開発の基盤となる組織についての研究は十分とは言えません。少子化や学生の多様化が進み、大学そのものが淘汰されていく時代において、これからの社会に求められる高等教育を実現するための組織づくりについて考えていく必要があります。
第三に、高等教育開発研究の成果発信は、論文中心から多様な形式へ拡張していく必要があります。ICEDの発表形式にも、PaperやPosterだけでなく、Workshop、Collaborative Space、ICED-Talksなどがあるように、実践を共有し、対話し、共同で知見を深める形式も重要です。これは、大学教員の業績評価を論文偏重から見直し、実践的・開発的な貢献を正当に評価する文化の形成にもつながります。
第四に、個別の実践研究だけでなく、JAEDとして組織的・共同的な調査研究を進める可能性も示されています。たとえば、学習支援の全国的・網羅的調査や、アドバイジング関連団体など他学協会との連携が考えられます。個々の実践知を蓄積するだけでなく、学会としてテーマを設定し、国内外に向けて日本の高等教育開発の特徴や事例を発信していくことが期待されています。
第五に、今後の高等教育開発研究を支える基盤として、実践者が互いに学び合い、実践を研究化していくコミュニティの重要性が指摘されています。授業改善や学習支援の実践を、どのように改善し、どのようなデータを集め、どのように報告や論文にしていくのかは、個人が悩みやすい問題です。そのため、実践者が相談し、試行し、発表し、フィードバックを得られる場をJAED内外に形成することが重要です。
結論として、これからの高等教育開発研究は、個々の実践を研究へと高めるだけでなく、実践者コミュニティ、他団体、国際会議、生成AIなどを結びつけながら、高等教育を改善する知と仕組みを共同でつくっていく方向へ進むべきであるとまとめられます。つまり、今後の高等教育開発研究は、単なる「研究成果の発表」ではなく、高等教育をよりよくするための知識生産・実践支援・組織変革を一体的に進める開発的研究として展開していくことが求められます。
最後まで残った12名で記念撮影
<参加者アンケートより(一部抜粋)>
・「ジャーナル、博士論文、実践の視点、と報告者のお三方から様々なお立場でお話いただけたので、面白かったです お話を聞くだけでなく、ワークショップ形式でアイデア発散の機会もあり、とても密度の濃いあっという間の2時間でした」
・「ご発表の内容が、全体的傾向や個別の研究など多方面からの指摘があって、自分の中で整理しやすかった。」
・「実践から論文、研究へとつなげるときにいつも生じる悩みや葛藤に対してアドバイスを得ることができた。」
・「新しいアクションのきっかけが得られ、やる気もアップした。」
次回、第2回JAED研究会(実践編)は、7月24日にオンラインで開催します。奮ってご参加ください。
